ママインタビュー |#04.三星マナミ

ソチオリンピックへ出場したフリースタイルスキーヤー三星マナミ。
スキー競技では初めて母としての五輪出場を果たした彼女の気持ちの強さはどこから来たのか。
そして幼い娘と離れて過ごした日々の、心の葛藤。
今だから語れる心の内を話してもらいました。

"ママである前に、一人の人間として私が「プロスキーヤー」と名乗る際に持った信念"

三星マナミ1

Q.子どもを育てながらオリンピックへの道を歩んだマナミ。子どもがいても出場したいというその強い意志は、どこから来たの?

ママである前に、一人の人間として私が「プロスキーヤー」と名乗る際に持った信念。それが私の意志の源です。

今でこそ五輪でフリースタイルスキーの新種目を知っていただけるようになりましたが、以前は日本の中でフリースタイルスキーに対する認知は薄く。また、五輪種目ではない事から一般の方々にも、業界の方々にも競技として理解されていないと感じる事がありました。

私が初めてフリースタイルスキーを目の当たりにした時に抱いた「カッコイイ!」という憧れ。

魅力あるフリースタイルスキーを日本の方々に知って欲しい!そして私自身も「カッコイイ!」と憧れてもらえるように頑張りたい。その想いが強く自分を突き動かしていたので、子供を出産してもオリンピックを目指すという事に迷いはありませんでした。五輪は一般の方々に「知ってもらう」のには絶好のチャンスでした。

目指す為には絶対的に家族の理解とサポートが必要だったので沢山の戸惑いはありましたが、家族の心強いサポートと後押しのお陰で実現しました。


"その言葉を娘のから聞いた時、「離れても大丈夫だ」と思えました。"

三星マナミ2

Q.オリンピックを目指し海外遠征やトレーニングなど選手として集中していた時期、娘の気持ちの変化をどんな風に感じた?

娘が1歳3ヶ月の時に世界選手権出場のために生まれてはじめて8日間離れました。その頃娘は保育園に入園したばかりでもあり、母の後追いが激しい時期で「離れる」という事に関して非常に過敏でした。顔を見て「行ってきます」なんて言えませんでした。

大会を終えて帰国した時の娘の笑顔。しかしその翌日に娘は急性胃腸炎となり、私が子供にかけている精神的ストレスは多大だと感じて胸を抉られる気持ちになりました。

そして1歳半頃の海外遠征で1ヶ月間離れる時。「行ってきます」を娘の正面で言えるようにはなりましたが目を合わせてくれず、私が「行ってきます」と言った瞬間に娘は大泣きしてしまいました。

2歳〜3歳になると冬のほぼ全て、約4ヶ月間離れて生活するようになりました。その頃の娘は私の「行ってきます」という言葉に、目に涙をいっぱい溜めて今にも泣き出しそうな顔で、「行ってらっしゃい」と返していました。私に気を使って泣くのを我慢している様子が誰にでも伝わる状況でした。

不在の時期は、主人と私たちの家族が中心となって娘に愛情を与え支えてくれていました。娘はママがいない時は「ママ」と言わなかったそうです。家族は「ママ一生懸命頑張っているから、スミ(娘)はママを一生懸命応援しようね!」と伝え続けてくれていました。

私は子供と約4ヶ月離れる事に、恐怖心にも似た不安でいっぱいでした。

長期遠征に出発する直前、私は娘に「ママまたスキーの練習し行かなくちゃならないんだけど、今度は少し長いんだ。でもね、ママがいなくても、誰かそばにいるからね。泣きたくなったら泣いていいからね。」と伝えると、娘は「ママがいなくてもスミにはパパもいるし、ばぁば(おばあちゃん)もいるし、じぃじ(おじいちゃん)もいるから寂しくないね。」と返してくれました。

その言葉を娘のから聞いた時、「離れても大丈夫だ」と思えました。

離れている時に私は直接愛情を与えることができないけれど、娘はママ以外でも沢山の愛情を感じ取って生きている、愛情を感じ取れる子供に成長していると感じて、本当に嬉しかったです。


"自分がこんなにも頑張れる人間になれたのは、頑張れる人間に変えてくれる存在があったからです。"

三星マナミ3

Q.母娘共にいろんな葛藤があったと思うけれど、終わってみてどう思う?

五輪への挑戦の全てが終わった時。娘に「挑戦する」と言う事のリアルを伝えることが出来たことは良かったと思います。娘は娘なりの「経験」をして成長してきた。でもまだそれぞれの想いはリンクしていないので、これからが大事で楽しい時期だと思います。

淋しい思いをさせている子供がいて、それをサポートしてくれる家族や仲間がいる。私は競技者である時間を無駄にはできないと思い、しっかり集中できました。

自分がこんなにも頑張れる人間になれたのは、頑張れる人間に変えてくれる存在があったからです。


" まず親御さんが思いっきり楽しむことが大切だと思います"

三星マナミ4

Q. 最後に、子供にスノーボードをさせたい母たちに、なにかアドバイスや一言あればお願いします。

最近「どうやったら運動が好きな子になりますか?」とか、「子供がスキーを好きになるにはどうしたらいいですか?」と聞かれる機会が多くあります。

そんな時私は「まず親御さんが思いっきり楽しむことが大切だと思います」と伝えています。

子供は親の背中を見て育つと昔から言われますが、きっと親御さんが楽しくやること全てに子供は興味を持つと思うのです。

私は職業柄においても「スキーは楽しい!」と表現していますし、アウトドアで楽しめる事全般が好きです。そして実は趣味が料理。そんな私の娘は、スキーが大好きで外遊びも大好き!お料理にも興味津々で包丁を使ってお手伝いし、「もう少し大きくなったらスミ(娘)がパパとママにご飯作ってあげるのー♡」と言ってくれちゃう親孝行ぶり(笑)

そういった感情を伸ばしてあげられるように、常に興味を持ってもらえる姿勢で刺激を与える母であれるように、私自身頑張りたいと思います。

みなさんにとっての素敵ママLifeを陰ながら応援しております。お互い頑張りましょー!


プロフィール

三星マナミ1プロフィール

  • 三星マナミ(みつぼし まなみ)(30歳 長女5歳)

  • フリースタイルスキーハーフパイプ女子界第一人者。現在は野沢温泉村を拠点とし、ご主人でありプロスキーヤーの上野雄大さんと共にCOMPASS HOUSEスキーショップを運営している。文部省から受諾を受け『Mama Athlete Network』プロジェクトを立ち上げ、今後のママアスリートをサポートできる環境づくりに奮闘中。
  • スポンサー ROXY OAKLEY
  • 主な戦歴 2012年W-CUP NZ大会2位  2013年世界選手権 OSLO大会4位  2014年W-CUP CANADA大会5位 冬季ソチ五輪出場
  • more info: MitsuboshiManami OFFICIAL FACEBOOKCOMPASS HOUSE